室山駅の変遷が知りたい。

以前2月のブログで、四郷村・室山周辺に広がる製絲・製茶・メリヤス工場へ出入荷する製品や燃料などの貨物運搬用に「室山驛には駅構内に旅客用とは別に貨物用引き込み線が設置されていた」という記事を書いた。これらは以前紹介した四郷郷土資料館に展示されている旧室山驛の様子を図示した史料(下写真参照)や、三重県立博物館(H23.3.30)発行の『三重の軽便鉄道廃線の痕跡調査ー』P.50内で現地住民の証言としても示されている。

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四郷郷土資料館の「旧室山驛」展示資料(右上の方角はたいじゅによる後付け)

その後、現在も多くの鉄道ファンの写真にも残され西日野駅前に建てられている看板の写真にもあるような廃線直前まで稼働していた片面ホームの小さな室山駅に「縮小」…というか建て替えられるわけだが。(※室山駅の駅舎建物自体は、廃線時期以降もそのまま残っていたということなので、「移築」の方が正しい…のか?)

さて、大正初期に完成したこの行き違いもできる大きな初代の「旧室山驛」は、いったいいつ頃に廃止されたのであろうか。少なくとも、僕がこれまで調べた小学生の自由研究レベル(笑)の調査研究の範囲では、旧室山驛・引き込み線廃止時期及び新しい室山駅の移築時期の特定が出来る正確な史料や情報といったものは現時点では見つかっていない(見つけられていない)。

とりあえず、引き込み線廃止時期の単純な考察としては、当路線の貨物運搬の需要、というか必要性がなくなった時期を引き込み線廃止の時期として考えるのが自然と考える。院線(国鉄・現JR)四日市駅(四日市市)~伊勢八王子駅を開業していた三重軌道㈱(※1916(大正5)年以降は三重鉄道㈱)は、貨物駅としての機能も併せ持っていた三重軌道㈱四日市鉄道㈱合同四日市駅の他、直接四日市港への貨物運搬を行うためであろう、合同四日市駅の手前から分岐・カーブして院線四日市駅南方を流れる阿瀬知(あぜち)川沿いに向けて貨物用引き込み線も同時に敷設されていた(下地図参照)。実際、1918(大正7)年には旧室山驛構内で貨車と

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大正11(1922)年四日市市市街図の一部。合同駅の直前で右にカーブし阿瀬知川方面に伸びる引き込み線が確認できる。すぐ横には南から伸びてくる伊勢電気鉄道㈱のものらしき線路も見えるが、津~四日市間の開業は1924(大正13)年のはずだが…?工事中だったのだろうか


客車が衝突する事故が発生しており(伊勢新聞1月13日付記事「三重軽鉄の衝突」より)、少なくとも旧室山驛の貨物線・貨物駅としての機能は稼働していたようである。が、これら引き込み線の敷地も1927(昭和2)年の三重鉄道㈱四日市鉄道㈱四日市市諏訪駅間の廃止、翌年の伊勢電気鉄道㈱による桑名~津市間の全通開業(泗桑線)区間に取り込まれたと思われる。よって、貨物線としての機能・効力を失ったこの1927(昭和2)年以降に旧室山驛の貨物引き込み線廃止、駅の改築(移築)が行われたと考えられる。

それを前提に、この年以降の国立公文書館蔵の三重鉄道㈱関連の鉄道省文書』の項目をチェックしていくと

「室山駅他四停車場設備変更の件」昭和7(1932)年3月2日付

というタイトルの文書にたどり着く。以前話した通り、国立公文書館での直接の文書閲覧をしなければ文書の詳細な内容を確認することはできないため確証はないが、おそらくこの年が「旧室山驛の貨物引き込み線撤去」の時期ではないかと推測する。そして、ここからは(またも)あくまで個人的な想像ではあるが、この時点では「旧室山驛の駅舎・及び旅客用プラットホームは現役のまま」であったろうと思う。撤去したのは貨物用引き込み線の軌条・施設・分岐器といった設備のみであり、最終的な片面ホームの小さな室山駅に移築されたのは八王子線全線電化の1948(昭和23)年ではなかったろうか」というのが僕の推測だ。全線の電化工事と西日野駅も含んだ駅などの施設移築に関しての推測に関しては、2月24日付ブログ「西日野駅も、移動する?」で書いているので、そちらを参照していただくと助かります。ただ、以前にも同じことを書きましたが、もし僕のこの推測が正しければ、室山駅も含めこれらの移設工事に関して記憶をお持ちの存命者(かなり高齢であるとは思いますが)の方が多少なりともおられるはずなので、それらの証言が史料・文献に出てくるはずなのですが、今のところほとんど出てきません。やはり僕の推測が的外れだからかもしれません…。いずれにせよ、この問題も含めた多くの謎に関しては、国立公文書館にて文書閲覧が叶えばある程度の疑問が解決されるであろうことが望めるので、早く実現の機会を持ちたいものです。…そろそろ、再度『伊勢新聞』の記事を閲覧しに行かねば。話題が(笑)。 以上 04/18